1.民泊ビジネスと宅建業法との関係は?

民泊ビジネス(外国人滞在施設経営事業)に関心の高い職種といえば、司法書士、税理士等の士業の方はもちろんですが、やはり不動産業の方が多い印象です。当事務所の民泊ビジネスセミナーに出席いただく方の中でも不動産業の方が多いです。

民泊ビジネスと不動産業は切り離せない関係にあり、Airbnb・民泊(外国人滞在施設経営事業)を不動産業の観点から考えた場合、自社で物件運用を行うのももちろんですが、オーナーに対しての資産活用の提案としても民泊(外国人滞在施設経営事業)は非常に魅力的です。

ですから、不動産オーナーさんに有効な不動産活用方法をコンサルティングする必要の高い不動産業の方々にとっては、かなり関心の高いテーマなのかな、と思います。

ここで民泊(外国人滞在施設経営事業)と不動産業といった観点で考えた場合、民泊の対象となる物件を紹介したり、自社物件を民泊に利用したりする場合、宅建業法の規制がかかるようにも思えることから、民泊(外国人滞在施設経営事業)を行うのに宅建業の免許はいらないのか?という点です。

2.自ら民泊(外国人滞在施設経営事業)を行う場合は宅建免許は不要

 

 

自分(自社)が条例の基準を満たし、民泊(外国人滞在施設経営事業)の認定事業者となり、Airbnb等を利用して民泊ビジネスを行う場合は、宅建業法でいうところの「宅地又は建物を自ら賃貸する行為」に該当します。

そしてこの「宅地又は建物を自ら賃貸する行為」はもともと宅建業法の規制対象外で宅建免許は不要です。

したがって、民泊(外国人滞在施設経営事業)を自らが認定事業者となって行う場合、宅建免許は必要ありません。

 

3.民泊(外国人滞在施設経営事業)をあっせんする行為も原則宅建免許は不要

次に、自らは民泊(外国人滞在施設経営事業)を行わず他人が行っている民泊(外国人滞在施設経営事業)の施設をあっせん・紹介する行為についてです。

現状ではこのような形態での事業はAirbnbやTOMARERU等のネット系の民泊施設紹介会社が該当する事になります。また、AIRBNB等のサポート会社も「AIRBNB可能物件」と称して、このような物件を紹介しているケースもあります。

ここで宅建免許が必要かは、民泊(外国人滞在施設経営事業)施設のあっせん・紹介が宅建業法上の「賃借の代理又は媒介」にあたるか、という問題に帰着します。

この点、宅建業法は、従来より、施設の使用に係る契約の内容によって実質的に判断しており、提供される施設に生活の本拠を有する者に適用されてきました。そのため、提供される施設に生活の本拠を有しないと考えられる滞在者を対象として、寝具等を備えた施設を紹介・あっせんする事業については、宅地建物取引業には該当しないものである、というのが一般的な考え方です。

上記の宅建業法の規制にかかるかのポイントは「提供される施設に生活の本拠を有しないと考えられる滞在者を対象として」の部分です。民泊(外国人滞在施設経営事業)施設は日本に一時的に来ている旅行者を対象とするものですから、賃貸借で部屋を借りる場合と違って生活の本拠はアメリカとか、中国とか、別のところにありますよね、であれば宅建免許は不要ですよ、という事です。

上記のように、この生活の本拠を移すか否かが宿泊業と賃貸業を分ける1つのメルクマールです。

したがって、民泊(外国人滞在施設経営事業)施設のあっせん・紹介する行為はそもそも賃貸行為ではない為宅建業法の適用はされません。

逆に数ヶ月程度滞在するマンスリーマンションのような形態だと、宅建業法の適用対象となる可能性は高いといけますので、注意が必要です。

 

4.民泊条例のケースについては賃貸借ではないのか?

ただ、今回の民泊条例との関係で考えた場合、若干これに関連しては疑問点が残ります。

確かに、一般的に民泊を解釈すると民泊は賃貸ではないという事になります。個人的にも民泊を賃貸であるという解釈はいささか強引すぎる解釈だと思います。

ですから、民泊は生活の本拠を移す賃貸ではないのだから、宅建業法が適用されないという考え方に基本的には同意できます。

しかし、他方で特区法は13条で国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業の定義につき以下のようにも言っています。

「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(国家戦略特別区域において、外国人旅客の滞在に適した施設を賃貸借契約及びこれに付随する契約に基づき一定期間以上使用させるとともに当該施設の使用方法に関する外国語を用いた案内その他の外国人旅客の滞在に必要な役務を提供する事業)」

(国家戦略特別区域法 13条1項)

これによると民泊(外国人滞在施設経営事業)として旅館業法適用除外が認められるには賃貸借契約及びこれに付随する契約に基づいた契約形態が必要です。

難しくなってきたのでまとめると、

 1.民泊は賃貸借ではない→宅建免許は不要

 2.旅館業法上の規制を緩和した特区法上では民泊は賃貸借契約の締結が求められている

とすると、

 3.民泊は賃貸ではないが、賃貸借契約は必要

となり、なんだか矛盾したことになってしまいます。

 

ただ今のところ、この点をきちんと決着するには時間がかかりそうです。

これからAIRBNBをはじめる自社物件のオーナーの方は、とりあえず宅建免許は不要、ということで、考えておけばいいかと思います。

 

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