1.民泊ビジネスと消防法
民泊ビジネスを行う場合、旅館業法上の規制をクリアしても、それだけでは十分ではありません。
民泊ビジネスをはじめるためには、「建築基準法」と「消防法」の規制をクリアする必要があり、多くの場合、ここで問題が起こることが多いので、以下、解説します。
2.消防法上必要な消火器について
こちらは、床面積が150㎡以上の場合という基準があるので、ほとんどのケースは、ここは該当しないことが多いと思います。
3.消防法上必要な誘導灯について
誘導灯は全ての施設で必要となりますので、注意が必要です。
ただし、避難口までの歩行距離や視認性等の一定の条件を満たせば設置は不要となる場合もあります。
4.消防法上必要な防炎用品について
カーテンやじゅうたんなどは防炎表示がされているものが必要になります。
5.消防法上必要な自動火災報知器について
民泊ビジネスを行う上で消防法との関係で一番問題となるのが、自動火災報知機です。自動火災報知機は規制の仕方も複雑ですので、最重要チェックポイントです。
詳細に説明します。
元々は、自動火災報知器の設置義務は、300㎡以上の場合に限定されていましたが、消防法が改正され、300㎡未満も設置しなければならなくなり事態が複雑になりました。
それでは、場合分けして解説します。
①建物全体の延べ面積が500㎡以上の場合
もともと延べ面積が500㎡以上の共同住宅には自動火災報知器の設置義務があるため、新たな規制はかかりません。
つまりは、既に自動火災報知器が設置されているはずなので、自動火災報知器の対応は不要ということです。
②建物全体の延べ面積が300㎡未満で民泊部分が1割以下の場合
この場合は、 民泊部分のみ自動火災報知設備の設置が必要になりますので、多少のコストはかかります。
ただ、300㎡未満の場合は設置すべき自動火災報知器は「特定小規模施設用自動火災報知器」と呼ばれる簡易的なものでよく、配線不要の無線式のものもあるので設置コストの削減が可能です。
③建物全体の延べ面積が300㎡以上、500㎡未満で民泊部分が1割を超える場合
実は、このケースが一番難易度が高くなります。また、追加コストも一番かかります。
なぜなら、建物全体に自動火災報知設備の設置が必要になるからです。
つまり、共同住宅の民泊とは全く関係のない部屋にも導入する必要があるということです。
これから民泊用の物件を選ぶ場合、こういった物件は、消防法の規制をクリアするのにかかるコスト、手間の点からも、絶対に選んではいけません。
6.民泊ビジネスに参入する場合の消防法からみた結論
では、上記をふまえると、今後民泊に参入される場合、どのようにしていけばいいのでしょうか?
コストを抑える意味で大規模な物件で①を、それがダメなら小規模な施設で②のケースに該当する物件を選びましょう。
消防法の規制に限りませんが、民泊ビジネスについては、事前調査が命です。1に調査、2に調査、3に調査です。
いい加減に進めると、思わぬ出費がかかったり、最悪、許可がおりないこともあり得るので、ご注意ください。
7.民泊ビジネスと消防法に関するQ&A
以下では、民泊ビジネスでよくあるFAQをまとめました。参考にして下さい。
Q1. 個人が自宅の一部を利用して人を宿泊させる場合でも、宿泊施設に該当しますか?
→無料で行う場合は宿泊施設には該当しません。個人が自宅や空き家の一部を利用して行う場合であっても,利用者を宿泊させるに当たり宿泊料を徴収するものは,消防法令上の宿泊施設に該当します。
Q2. AIRBNB等の民泊マッチングサイトに登録して利用してもらうことは,宿泊施設に該当するのですか?
→宿泊料を徴収して,1箇月未満の期間で利用させることがあるときは,通常、消防法令上は宿泊施設に該当します。
Q3. 賃貸借契約により空き家を貸した場合でも宿泊施設に該当するのですか?
→契約の形態ではなく、日数、生活の本拠があるか、生活の実態はあるか等で判断されます。通常、1箇月未満の期間で利用させることがあるときは,消防法令上は宿泊施設に該当します。
8.ホテル、旅館の場合と共同住宅の場合の消防法のまとめ
民泊の場合、消防法上はホテル、旅館と同等のカテゴリーになりますので、基本的にはホテル、旅館と同等の基準での消防設備が必要です。
これらをまとめたものが以下の表になりますので、参考にして下さい。
ホテル旅館 | 共同住宅(マンション) | |
スプリンクラー(例外:防火区画された構造など免除規定あり)の設置義務
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延べ床面積600㎡以上
4階から10階で1500㎡以上の階
階数が11階以上
地階・窓のない階で1000㎡以上
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11階以上の階 |
自動火災報知設備の設置義務
(例外:利用部分等の割合などにより規定あり)
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原則としてすべての部分に設置が必要(例外:300㎡未満は特定小規模施設用でOK)
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延べ床面積が500㎡以上の場合は設置が必要
11階建て以上の場合は11階以上の階層に必要
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消防へ通報する火災報知設備の設置義務
(例外:消防署への距離などに依る免除規程緩和措置あり)
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延べ床面積500㎡以上
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延べ床面積が1000㎡以上の場合設置が必要
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誘導灯・誘導標識の設置義務(例外:施設の規模や視認性(明らかに避難路がわかる場合など)免除規定あり)
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施設全体に必要
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地階、無窓階、11階以上の階には設置が必要
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消防設備の点検義務
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点検年2回、報告は年1回
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点検年2回、報告3年に1回
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防火管理者の設置義務
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収容人数30人以上の場合必須
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収容人数50人以上の場合必須
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9.ホテル、旅館の消防点検の実施、報告について
(1)消防設備の点検の実施
消防設備は設置して終わりではありません。緊急時に消防設備がきちんと機能するよう、点検、報告が必要となっています。
①消防設備の点検(6ヵ月ごとに必要)
消防用設備等の適正な配置、損傷の有無などを外観から点検します。また、その機能について、外観から又は簡易な操作により判別できる事項を確認します。
②消防設備の総合点検(1年ごとに必要)
消防用設備等を作動又は使用することにより総合的な機能を確認します。
(2)消防設備の不良個所の改修・整備
消防設備に不良個所があれば、消防設備士等に相談するなどすみやかに改修・整備を行ってください。
(3)消防点検結果報告書の作成
点検結果を記入した点検結果報告書及び点検票を2部ずつ(提出用、保管用)作成します。
(4)報告期間(報告サイクル)
a特定防火対象物は1年ごとに1回
→旅館、ホテルは特定防火対象物にあたりますので、1年に1回の報告が必要です。
b.非特定防火対象物は3年ごとに1回
→共同住宅、事務所、工場、倉庫、駐車場、学校などは非特定防火対象物なので、3年ごとに1回の報告が必要です。
(5)提出先
防火対象物の所在地を管轄する消防署長宛て1部提出してください。
簡易宿所・民泊ビジネス開業のお問い合わせは・・・
TEL:06-6375-2313
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(※相談予約制・相談費用5400円/30分)