1.旅館業とは
旅館業とは「宿泊料を受けて」「人を宿泊させる営業」と定義されています。
「宿泊」とは「寝具を使用して施設を利用すること」とされています。ですから、たとえば昼間にオフィスを貸す、貸し会議室のようなビジネスについては旅館業の許可は必要ありません。
そして、旅館業に該当する行為は、は「人を宿泊させる」ことであり、顧客が部屋に生活の本拠を置くような場合、例えばアパートや間借り部屋などは貸室業・貸家業であって旅館業には含まれません。
また、旅館業に該当するためには、「宿泊料を受けること」が要件となっており、宿泊料を徴収しない場合は旅館業法の適用は受けません。
ですから、無料で友人を宿泊させるようなケースは旅館業の許可は必要ありません。
ただ、そうすると、宿泊料は無料としておいて、休憩料、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱水道費、室内清掃費等の名目で費用を徴収すれば問題ないのでは?と考える方もいるかもしれません。
しかし、そのような脱法的な方法は認められません。旅館業法にいう「宿泊料」には名目のいかんを問わず実質的に寝具や部屋の使用料とみなされるものは含まれます。例えば、休憩料はもちろん、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱水道費、室内清掃費も宿泊料とみなされます。
また、宿泊施設付きの研修施設(セミナーハウス)等が研修費を徴収している場合も、例えば当該施設で宿泊しないものも含め研修費は同じとするなど当該研修費の中に宿泊料相当のものが含まれないことが明白でない限り研修費には宿泊料が含まれると推定されます。
ただし、食費やテレビ・ワープロ使用料など必ずしも宿泊に付随しないサービスの対価は宿泊料には含まれません。
2 旅館業の種別
旅館業にはホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業及び下宿営業の4種があります。今話題のAIRBNB等の「民泊」については、今のところ、(3) 簡易宿所営業に含めるか、別で「民泊」カテゴリーを作るかで議論されています。
(1) ホテル営業
洋式の構造及び設備を主とする施設を設けてする営業である。
(2) 旅館営業
和式の構造及び設備を主とする施設を設けてする営業である。いわゆる駅前旅館、温泉旅館、観光旅館の他、割烹旅館が含まれる。民宿も該当することがある。
(3) 簡易宿所営業
宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を設けてする営業である。例えばベッドハウス、山小屋、スキー小屋、ユースホステルの他カプセルホテルが該当する。
(4) 下宿営業
1月以上の期間を単位として宿泊させる営業である。
3 旅館業についての営業の許可
旅館業を経営するものは、都道府県知事(保健所設置市又は特別区にあっては、市長又は区長)の許可を受ける必要があります。旅館業の許可は、旅館業法施行令で定める構造設備基準に従っていなければなりません。旅館業の運営は、都道府県の条例で定める換気、採光、照明、防湿、清潔等の衛生基準に従っていなければならないとされています。
4 環境衛生監視員とは
旅館業の施設が衛生基準に従って運営されているかどうか、都道府県知事(保健所設置市又は特別区にあっては、市長又は区長)は報告を求め、立ち入り検査をすることができる。この業務を行うものを環境衛生監視員といいます。
5 旅館業経営者の宿泊させる義務等
旅館業者は、伝染性の疾病にかかっている者や風紀を乱すおそれのある者等を除き宿泊を拒むことはできません。また、宿泊者名簿を備えておく必要があります。
ただ、宿泊者名簿は、紙で保存する必要はありません。「厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令」第4条第1項に基づき、電磁的記録による保存ができます。
(省令の概要、条文 http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/03/tp0328-1.html)
6 旅館業者に対する改善命令、許可取消又は停止、罰則
都道府県知事(保健所設置市又は特別区にあっては、市長又は区長)旅館業者の施設が構造設備基準又は衛生基準に反するときは改善命令、許可の取消又は営業の停止を命ずることができます。また旅館業法第10条では、許可を受けないで旅館業を経営した者は、6月以下の懲役又は3万円以下の罰金に処することとされています。