1.民泊新法で民泊の条件が大幅に緩和される?
2016年5月現在、いわゆる「民泊」を合法的に行うには、一般に、国家戦略特区法に基づき、東京や大阪等の国家戦略特区で「特定認定」を取るか、「簡易宿所」の許可を取る等が必要です。
しかしながら、このどちらもハードルが高いことから、簡易宿所などの旅館やホテルのルールである旅館業法とは別に、新たな「民泊」という仕組のルールとしての「民泊新法」の創設が検討されています。
新たな民泊の仕組の中で「管理者」という言葉が出てきておりますが、どういう意味なのかわかりにくいので、現在わかっている範囲で以下説明いたします(現時点では、新法は来年の国会に提出予定なので、今後の新法の内容次第で変更がある可能性がございますのでご注意ください。)
2.民泊の管理者とは
民泊の管理者とは、一般に、民泊施設の管理、すなわち宿泊者の本人確認と名簿の作成、近隣住民とのトラブルへの対応、ゴミ出しルールの告知、損害賠償保険への加入などを義務付けられる業者を指します。
この管理者は登録制となっており、行政機関への登録が必要となります。
そして、この民泊運営の管理者は民泊運営のかなり大きな責任を負う事になります。
例えば、管理者は、「宿泊している外国人が騒いでいる」「決められた場所にゴミを出していない」といった近隣からのクレームが来た場合、苦情相談の窓口となって、そのクレームの対応をする責任を負います。
また、民泊の管理者となった業者の職員には、民泊に関するトラブルに対して、どのように対応をするかといった研修も求められます。
トラブルを放置していた場合、管理者は登録を取り消されて、民泊の営業を禁止される場合もあります。
3.民泊の管理者の主要な義務
では、具体的に、民泊の管理者はどんな義務を負うのでしょうか?
以下、簡単に管理者の義務をご紹介します。
①近隣住民からの苦情受付・トラブルへの対応
→民泊では近隣住民との調和が重点項目としてあがっておりますし、要件を緩和すればするほど住民とのトラブルは多くなるでしょうから、きちんとした対応が必要です。
②宿泊者名簿作成
→旅館業の場合と同じく、宿泊者名簿の作成が必要です。
③民泊トラブル対応の従業員研修
→管理者(管理会社)の従業員が苦情、トラブルに対応することになるため、対応方法についての教育、マニュアル等がなければ現実的な対応は不可能です。そのため、社員研修等が義務付けられます。
④損害賠償保険の加入
→現状、違法に民泊運営をしている場合、宿泊者が火事や漏水をしても、違法営業のため、損害賠償保険はほぼ下りません。今後は合法的な運営が可能となるので、損害賠償保険商品も多数開発されると思います。
⑤宿泊者へのゴミ出し、部屋の利用方法など注意事項の説明
→宿泊者の多くは外国人であり、生活習慣も違います。ちなみにアジアの国のほとんどの地域ではゴミの分別をする習慣はございませんので、ゴミを分別する方法がすぐにわかる人はかなり少ないと思ったほうがよいでしょう。
⑥法令・契約違反がないかの確認
→無断転貸でないか、管理規約に違反していないか、本人確認を行っているか等、 法令・契約違反がないかの確認は管理者が責任を持って行います。
4.管理者の資格の条件はあるのか
ここはまだはっきりしないところですが、「民泊の管理者」は、「実際に物件を管理している者」(事業者)が対象になる予定です。
つまり、不動産業者や旅館業者といった業者が民泊の管理者になると思われます。
逆に言うと、Airbnbのような民泊仲介サイトの運営業者は実際に物件を管理していないので、管理者とはならないと想定されます。
ただし、仲介業者には、民泊サービスであることをサイト上に明示させ、行政に対する情報提供も義務化し、無許可営業と知りながらサイトに掲載した場合には、業務停止命令などの処分を出すことも検討するとのことです。
5.まとめ
この法律が施行されると、無許可営業では仲介サイトへの掲載ができなくなるので、現在のようなヤミ民泊はほとんどできなくなると思われます。今後、厳しかった民泊の条件は徐々に緩和されていきますが、その一方で、管理者の責任は重くなっていくことが予想されます。管理者はしっかりと法令を遵守していくことが必要で、それをしないと業務停止等の厳しい処分が下ることになることでしょう。
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