1.民泊新法の概要が明らかに

今までなかなか方向性が見えてこなかった民泊の規制ですが、平成28年6月2日に規制改革実施計画の閣議決定があり、民泊新法の全貌がほぼ明らかとなり、ようやく民泊新法の着地点が見えてきました。

今後は家主が居住するホームステイ型と家主が不在の投資型によって規制の内容が異なります。

また、家主不在型の管理者や民泊の仲介事業者は登録制となります。

そして、民泊運営には一定の日数制限がつきます

それでは、今回の民泊新法に関する規制改革計画の内容を以下、解説します。

 

 

2.民泊の規制改革計画の概要

1.民泊の類型は(1)家主居住型(2)家主不在型の2つのタイプに分けられています。

(1)家主居住型

(家主居住型の民泊の要件)

 

①個人の生活の本拠である(原則として住民票があ る)住宅であること。

→一次的には住民票で判断されますが、形式上住民票を移した場合でも、生活の本拠が住民票の場所にない場合は、条件をみたさず、家主不在型になります。

 

②提供日に住宅提供者も泊まっていること。

→例えば、家主が海外に長期出張したり、自分が自宅を使わない休日だけ貸し出す場合は、家主居住型にはなりません。あくまでホームステイのように、同じ屋根の下で宿泊者といることが必要となります。

 

③年間提供日数などが「一定の要件」を満たすこ と。

→ここでの「一定の要件」が何かが重要な問題となりますが、主として「年間180日以下(半年未満)の提供日数制限」を設ける方向です。

つまりは、ホテルや旅館と違い、「住宅」なのだから、「住宅利用」と「民泊利用」と比較した場合、住宅としての利用がメインである必要がありますよ、ということです。

 

 

(家主居住型の民泊規制の内容)

①届出制とし、以下の事項を義務化する。

 

・利用者名簿の作成・保存が必要

→利用者の住所、氏名、生年月日、パスポート番号、職業等の記載が必要となると思われます。

 

・衛生管理措置(一般的な衛生水準の維持・確保)が必要

→一定の水質の保持、清掃等が必要になります。

 

・利用者に対する注意事項(騒音、ゴミ処理等を含むの説明、民泊を行っている旨の玄関への表示、苦情等への対応など)が必要

→近隣住民とのトラブルを起こさないよう、家主が宿泊者にしっかりと説明し、苦情があれば真摯に対応する必要があります。

 

・管理規約違反がないことの確認(※集合住宅(区分所有建物)の場合)

→購入したマンションの場合、多くの場合、利用目的は居住用になっていますので、例えば「民泊が可能である旨の文言」まで必要となれば、ほとんどのマンションでは民泊不可となってしまいそうです。今後は、管理規約の中に、「民泊可能」か「民泊不可」かが明記されていく方向になると思われます。

 

・賃貸借契約(又貸しを認めない旨の条項を含む)違反の不存在の確認(※住宅提供者が所有者でなく賃借人の場合)

→いわゆる転貸の場合は、オーナーさんから転貸可能である旨の承諾を取り付ける必要があります。

 

・行政当局(保健衛生、警察、税務)への情報提供

→伝染病等の発生、犯罪の発生、税金が無申告の場合等は関係行政機関への情報提供義務があります。

 

②住宅として、住居専用地域でも民泊実施可能とす る。ただし。地域の実情に応じて条例等により実施できないこととすることも可能とする。

→恐らく、民泊許可や簡易宿所の許可申請をする場合に、今まで長らく民泊ホストを悩ませてきた、建築基準法や消防法については、チェックの対象にはならないのではないかと思われます。ただし、「条例で民泊禁止が可能」ということになると、何かトラブルがあった場合に、国ではなく民泊を認めた自治体に住民から責任追及が来ることを恐れ、「民泊禁止」に動く自治体がかなり多くなるように思います。

 

③宿泊拒否制限規定は設けない

→AIRBNB等で、過去の評価の悪いホストは断ることができます。

 

 

 

(2)家主不在型

(家主不在型の民泊の要件)

①個人の生活の本拠でない、又は個人の生活の本 拠であっても提供日に住宅提供者が泊まっていない住宅であること。(※法人所有のものも含む。)

②年間提供日数などが「一定の要件」を満たすこと。

→「一定の要件」としては、年 間提供日数上限による制限を設けることを基本として、半年未満(180日以下)の範囲内で適切な日数 を設定する、としているので、家主不在型の場合も、家主居住型でも、どちらも半年未満(※具体的に何日かは今後決定される)という日数制限がつくことになります。

 

③提供する住宅において「民泊施設管理者」が存在すること。(登録された管理者に管理委託、又は住宅提供者本人が管理者として登録。)

→家主不在型の場合、誰が責任者なのかわからないことが問題視されてきた経緯から、本人または登録された管理者に委託して、誰が民泊の管理責任者なのかを明確にすることになります。

 

 

(家主不在型の民泊規制の内容)

 

①届出制とし、民泊を行っている旨及び「民泊施設管理者」の国内連絡先の玄関への表示を義務化す る。

→これにより、民泊をやっていることは外部からわかるようになり、また、苦情があれば、それを見た住民から連絡がくることになります。

 

②住宅として、住居専用地域でも民泊実施可能とする。地域の実情に応じて条例等により実施できないこととすることも可能とする。

 

③宿泊拒否制限規定は設けない。

 

 

2.民泊施設管理者について

 

①民泊施設管理者は登録制とし、以下の事項を義務化する。

 

・利用者名簿の作成・保存 ・衛生管理措置(一般的な衛生水準の維持・確保)
・利用者に対する注意 事項(騒音、ゴミ処理等を含む)の説明、苦情等へ の対応など
・管理規約違反 の不存在の確認(※集合住宅(区分所有建物)の場合) 、賃貸借契約(又貸しを認めない旨の条項を含む)違反の 不存在の確認(※住宅提供者が所有者でなく賃借人の場合)
・行政当局(保健衛生、警察、税務)への情報提供義務

→ここまでは、概ね家主居住型の家主の義務を民泊施設管理者が代わって行う、ということになります。

 

 

・法令違反行為を行った場合の業務停止、登録取消を可能とするとともに、不正行為への罰則を設ける。

→ここは管理者にとってとても恐ろしい内容ですね。きちんとやるべきことをやっていないと、業務停止となり、犯罪者となってしまう可能性があります。ですので、逆にこれがプレッシャーとなって、ちゃんと義務を果たす方向に向かう、ということでもあります。

 

 

3.民泊施設の仲介事業者の規制

①登録制とし、以下の事項を義務化する。

・消費者の取引の安全を図る観点による取引条件の説明
・当該物件提供が民泊であることをホームページ上に表示
・行政当局(保健衛生、警察、税務)への情報提供
②届出がない民泊、年間提供の日数上限など「一定の要件」を超えた民泊を取り扱うことは禁止する。

③法令違反行為を行った場合の業務停止、登録取消を可能とするとともに、不正行為への罰則を設ける。

 

→これはAIRBNB等の民泊仲介業者にとっては非常に大きなプレッシャーになります。また現在は多くの違法の疑いのある物件も登録されていますが、そのような物件を登録していると民泊仲介業者はビジネスができなくなります。

 

そうすると、無許可(無届け)の民泊施設は登録されなくなりますので、ヤミでの民泊は相当困難になると思われます。

 

4.民泊新法の内容のまとめ

今回の規制改革実施計画で、住居としての民泊は日数制限がかかり、一年中営業が出来ないということが、ほぼ決まっていますので、日数制限が年間何日までの規制となるのかが興味深いところです。

ただ日数制限が最大の180日を限度とする、という規制内容としても、年間180日の稼動ですと、投資的な魅力はかなり薄れてしまうと思いますので、一泊から宿泊可能な簡易宿所の許可取得を検討したほうがいいケースも多くなると思います。

また国家戦略特区の民泊条例や簡易宿所(ゲストハウス)の許可よりも大幅に民泊可能な条件を緩和する以上、無許可、無届でのヤミ民泊の取り締まりは相当厳しくなります。

これから民泊ビジネスを長期的にやっていきたい場合は、近い将来このようなルールになることを踏まえ、賃貸との組み合わせや簡易宿所の許可や民泊許可を得る等の方法で、合法的な運営方法を模索していく必要があると思います。

 

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