「民泊新法はこうなる!」の記事一覧

民泊新法で1室でもホテルオーナーになれる?

民泊新法はこうなる!

民泊新法上の届出は使えるか?

6月15日の民泊新法の施行後、中国人、台湾人、香港人をはじめとする外国人の方から大阪や京都で民泊を経営したいという相談が多数寄せられています。

ここで、民泊新法で届出だけで民泊事業をできる、ということばかりが話題となっています。

しかし、そもそも住宅宿泊事業法は営業日数制限といって、年間で180日以内の制限があり、また地方自治体レベルでの上乗せ条例が多数可決されています。

自治体によっては、学校の付近での平日民泊禁止や、閑散期の2ヶ月のみ営業可能など、かなり大きな制限がかかるケースも多く、ビジネスそのものとしてかなりハードルが高くなっていることが多いです。

つまり、住宅宿泊事業法に基づく届出は、どちらかといえば自宅や別荘、マンションの空き部屋を有効利用することが主眼で、ビジネスとして行うとしても、がっつりビジネスとして行うのは難しいといえます。

一方で、旅館業法のホテル、旅館、簡易宿所に関する改正もなされています。

今回の改正では、旅館業法の基準が大幅に緩和されていますので、民泊をビジネスとしてばりばりやっていきたい方についてはこちらの方が使えるな、と個人的には思っているので、民泊ビジネスに興味のある方は是非御覧ください。

民泊新法施行後のホテル・旅館の制度的改正点

ホテル・旅館の改正点としては以下のような改正がなされています。

ホテル、旅館の最低客室数の廃止

従来は、ホテル営業:10 室以上、旅館営業:5室以上という基準がありました。つまり、客室が1室しかないホテルというものはありえなかったわけです。

しかし、今回の改正でホテル営業:10 室、旅館営業:5室の基準が撤廃されました。

これにより1室から旅館・ホテル営業の許可取得が可能となります。

つまりこれは、古民家や一軒家でも、「ホテル」になりうる、ということです。

和室・洋室の構造設備の要件の廃止

ホテル営業は、少なくとも過半数は洋室(寝具は洋式であること)である必要がありました。

しかし、今後は和洋の区別がなくなります。つまり、洋式の部屋のみでも、和式の部屋のみでもホテルになります。

したがって、和室のみしかない「和式ホテル」も可能になります。

便所の設備基準の緩和

従来例えば「定員6人~10人は、大便器2個小便器1個」が基本的なラインでした。このため、トイレの増設で多額の工事費用がかかったり、トイレを設置したくてもスペースがなくてできないことが多くありました。

しかし、今後は「定員6人~10人は、大便器2個小便器1個」という基準ではなくなり、適当な数の便所を有すればよいとなりました。

これにより、自治体によってはトイレの数が少なくても設備に問題ないとして認めることも出てきますので、今まで構造上の問題で旅館業の申請ができなかった物件も申請が可能になります。

玄関帳場等の基準の緩和

玄関帳場については、厚生労働省の指針としては、すでに廃止され、「代替措置をとることを条件に」玄関帳場の必要性は各自治体で判断することになっていました。

ただ、今回より指針が明確になりました。

今回の改正により、いわゆるフロントの設置が、玄関帳場等の代替機能のあるもので可能になります。これにより常駐スタッフが不要になるので、人件費の大幅な削減につながります。

具体的には、ビデオカメラでの本人確認、スマートロック、近所の事務所でチェックインなどで対応が可能です。

ただし、あまりにも離れた場所では緊急対応ができないので、『常時10分以内に駆け付けられる体制』が必要です。

つまり、近隣であれば、複数の宿を1カ所の事務所で管理することができます。これをサテライト型玄関帳場といいます。

具体的に必要となる「玄関帳場等に代替する機能を有する設備」の基準は下記の通りです。

① 事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応を可能とする設備であること

② 宿泊者名簿の正確な記載、宿泊者との客室の鍵の適切な受け渡し及び 宿泊者以外の者の出入りの状況の確認その他善良の風俗の保持を可能とする設備であること。

全く本人確認が不要というわけにはいきませんが、従来よりも、ホテルや簡易宿所の運営がしやすくなったことは間違いありません。

まとめ

以上のように、民泊新法の施行後は、住宅事業法に基づき届出をする以外にも、思い切ってホテルの開業をしてみる、というのも一つの選択肢です。

今までは「ホテルオーナー」というと、大金持ちのイメージでしたが、今後はホテルを持っているオーナーさんはかなり増えそうですね。

当事務所では、ホテルや簡易宿所の申請、住宅宿泊事業法の届出の代行サポートを行っておりますので、このような問題でお悩みの方は、是非お気軽にお声がけください。

 

 

AIRBNBのリスティング削除には抜け道がある?

民泊新法はこうなる!

 

6月1日の日本経済新聞によると、無届で違法民泊を行っている物件につき、掲載しないよう通知を出したようです。

その記事がこちら。

観光庁は1日、6月15日に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行された後に違法となる物件について、既存の予約の取り消しや合法物件への変更をするよう仲介業者に通知を出した。現時点で民泊新法に基づく届け出のない物件についても、新規の予約を受け付けないよう求めた。

民泊新法は、民泊事業者が自治体に届け出することを条件に、年180日まで住宅に旅行者などを泊めることを認める。観光庁によると、5月11日時点の届け出件数は724件にとどまる。

大手仲介業者のサイトには何万件もの物件が掲載されているが、届け出件数が現状のペースで推移した場合、民泊新法の施行後にその多くが違法物件に該当する可能性がある。

仲介業者が違法となる見込みの物件の予約を取り消した後で、その予約者に合法物件を紹介することが難しい場合は、観光庁が日本旅行業協会などから得た旅行会社などの情報を提供する。

 

これを受け、AIRBNBでも、8割近くの物件を削除したようです。逆にいうと8割は違法状態だったということですが。

しかしながら、これにはどうも抜け道があるようです。

いったん非掲載となり、削除された物件も、6月5日時点では、再度掲載すれば、システム上は、普通にリスティングが復活してしまうようです。

こうなるとマスコミ向けには8割の物件を削除した、とリークしておいて違法民泊を放置するな、という批判をかわし、裏では抜け道を用意して利益は確保しておく、という戦略なのでしょうか。

ただ6月15日以降は合法性の確保できない物件は仲介できないことになるので、短期的な措置なのかもしれません。

当事務所では、セミナーで早めに合法化するようすすめておりましたが、当事務所のアドバイスに従い、早めに特区民泊や簡易宿所を取得したホストさんには春が到来することは間違いないでしょうね。

6月15日が間近ですが、そのときにAIRBNBがどう出てくるか、注視したいと思います。

 

<追記>

AIRBNBは現在、6月15日以降の予約についても、届出番号等を提出しない限り、リスティング削除(掲載停止)としています。

リスティングで削除された件数はおよそ全体の八割超、40000件以上にのぼる見込みです。

その上で、当該措置により生じた損失を補填するようです。

この大量のリスティング削除にともない、現在特区民泊や簡易宿所の許可を取っているところは予約が殺到しているようです。

旅行者にとっては、楽しいはずの旅行が台無しにならないよう、別の宿がすぐに見つかるといいですね。

 

民泊新法(住宅宿泊事業法)に関するQ&A

民泊新法はこうなる!

民泊新法(住宅宿泊事業法)届出に関するQ&A

 

Q.民泊新法(住宅宿泊事業法)の届出はいつから開始しますか?

A.平成30年6月15日からです。ただし、届出の受付は同年3月15日から開始しています。

 

Q.住宅宿泊事業の契約は賃貸借契約と同じですか?

A.賃貸住宅が「賃貸借契約」であることに対し、住宅宿泊法は「宿泊サービス提供契約」です。両者は法的な権利、義務が全然違いますので、別物とお考えください。

 

Q.住宅宿泊事業は1年中営業出来ますか?

A.できません。上限は180日となっています。ただし、勘違いしないでほしいのは、カウントされるのは実際に宿泊した日数であり、募集した日数ではありません。ですから、募集自体は1年中行っていても、実際に宿泊した日が例えば175日であれば合法です(※各自治体の条例による規制がない場合に限る)。

 

Q.年間180日を超えるかはいつからいつまでの期間で判断されますか?

A.毎年4月1日から3月31日までの期間で判断されます。

 

Q.民泊新法で180日運営して、その他の機関をマンスリーマンションややシェアハウスとして利用することはできますか?

A.マンスリーマンションやシェアハウスとの併用は問題ありません。なお、マンスリーマンションの契約や、シェアハウス(多くは定期借家契約の形態)は賃貸借契約となり、住宅宿泊事業を行った日数にはカウントされません。

 

Q.年間180日を超えているかどうかはどのように判断されるのですか?

A.年間180日以内の運営は、基本的には運営事業者の報告で判断します。 さらに、観光庁長官の登録のある仲介会社も観光庁に対し報告義務があるため、それらとシステム上で照らし合わせを行ないます。ただし、住民からの通報がある場合は、調査の対象となることがあります。

ですから、例えば複数の仲介事業者を使えば180日を超えてもばれないという考えは通用しません。

なお、一つの物件は一つのIDで管理する為、複数の仲介会社を利用していた場合は仲介業者が同一のIDで報告した宿泊数の合計で180日以内なのかを判断します。

Q.住宅宿泊事業の運営が180日を超えた場合はどうなりますか?

A.181日目以降は旅館業法下での判断となり、許可をとっていなければ旅館業法違反となります。100万円以下の罰金や6ヶ月以下の懲役等の罰則規定があります。

Q.住宅宿泊仲介業の登録のない事業者に登録した場合、どうなりますか?

A.住宅宿泊仲介業の登録のない仲介会社を利用すると、一時的に業務停止となります。運営に支障をきたしますので、住宅宿泊仲介業の登録の有無を翌ご確認ください。

Q.180日の日数制限はどのようにカウントされますか?

A.180日の日数制限は各部屋に対して行なわれるもので、基本的に、180日運営されたかどうかはそれぞれの部屋や施設に対してカウントします。逆に言うと、1日のオーナーが複数の物件をそれぞれ180日以内で運営する分には問題ありません。

 

Q.全国どこでも年間180日の運営が出来ますか?

A.法律の上限は180日ですが、各自治体(市区町村)が独自の条例で日数規制を行ったり、営業地域を限定したりすることは可能です。そのため、スタートする前に物件所在地の条例を確認する必要があります。

但し、特段の理由なく一律禁止するような厳しい規制をすることは望ましくないとしています。

 

Q.一つの部屋を複数の人で登録したいです。例えば、Aマンションの一部屋をBとCでそれぞれ登録して、180日づつ稼働させたいですが、可能でしょうか?

A.一つの物件を複数の者で届出することは認められておりません。また、一つの物件は一つのIDで管理することになりますので、一つの物件を複数のIDで管理することもできません。

 

Q.運営者が一つの部屋で180日間運営したのち解約し、すぐに別の部屋を借りて180日を運営する方法で1年を通して運営していくことは問題ないでしょうか。

A.問題ありません。180日の日数制限は運営者ではなく、各部屋に対して行なわれるもので、近隣住民への迷惑をかけないようにするための制限という考え方であるためです。

 

Q.現在所有し、居住しているマンションを民泊新法に合わせて住宅宿泊事業用の物件として利用したいです。ただ、管理組合の反対にあっています。この場合、住宅宿泊事業を行うことはできないのでしょうか?

A.民泊新法では、住宅宿泊事業を行うことを禁止していない旨の証明書の提出が必要です。

ガイドラインでは、届出者は管理組合に事前に住宅宿泊事業の実施を報告するとともに、「届出時点で住宅宿泊事業を禁止する方針が総会や理事会で決議されていない旨を確認した誓約書(様式C)」、あるいは「本法成立以降の総会及び理事会の議事録その他の管理組合に届出住宅において住宅宿泊事業を営むことを禁止する意思がないことを確認したことを証明する書類」が必要になる、としています。

 

Q.住宅宿泊事業を行うにはどのくらいの広さの物件が必要ですか?

A.ガイドラインでは「居室の宿泊者 1 人当たりの床面積を、3.3 ㎡以上確保すること」としています。これは、不特定多数の宿泊者が一カ所に集中することにより感染症等衛生上のリスクが高まるからです。

居室の床面積は、宿泊者が占有する部分の面積を指します。逆に、宿泊者の占有ではない台所、浴室、便所、洗面所、廊下のほか、押入れ、床の間は含みません。

面積は旅館業法に基づく簡易宿所の取扱いと同様の算定方法とし、壁の内側で測られた建物の面積である「内寸面積」で算定することとしています。

 

Q.大阪市では条例での規制がありますか?

A.大阪市は当初は特別な規制を設けない方針でした。しかし、民泊施設での殺人事件を受け、条例で「住居専用地域」における住宅宿泊事業法による届出による営業を全期間で禁止しています。ただし、このうち「幅4メートル以上の道路に接する住宅の敷地」は適用対象外となります。さらに「小学校の敷地の周囲100メートル以内の区域」における月曜日の正午から金曜日の正午までのいわゆる平日営業を禁止しています。

 

 

Q.民泊新法の届出は自分でできますか?行政書士に依頼した方がいいですか?

A.確かに、法律上届出自体は自分でも可能です。しかしながら、書類については特区民泊よりも多くなっていますので、かなりのボリュームがあり、正直、個人で手続きを行うのはかなり大変です。

ですので、できる限り民泊専門の行政書士に依頼することをおすすめします。

 

Q.自分では手続きするのは難しそうなので民泊新法の届出書類の作成や提出を依頼したいです。費用はどのくらいかかりますか?

 

A.民泊新法の届出の費用、報酬のページをご覧ください。

 

違法民泊物件はAIRBNBから削除されます!

民泊新法はこうなる!

違法民泊物件は6月15日までに

AIRBNBから削除されます!

観光庁は、「違法民泊物件の仲介等の防止に向けた措置について」というものを発表しました。

これにより、住宅宿泊事業法の開始までには違法民泊物件は削除される見込みです。

その内容がこちら。

 

「違法民泊物件の仲介等の防止に向けた措置について」
(民泊仲介サイト運営事業者あて通知)のポイント
民泊仲介サイトに違法な民泊サービスを提供している物件が掲載されていることが指摘されていることから、省令、ガイドラインに基づくもののほか、民泊仲介サイトへの違法な民泊の掲載の防止に向けて事業者において重点的に対応を要する措置について民泊仲介サイト運営事業者あてに通知するもの。
Ⅰ.住宅宿泊事業法の施行前又は登録申請までに講ずべき措置
1.民泊仲介サイト運営事業者は、既掲載物件について営業者からの申告に基づき旅館業の許可番号等を確認する等の方法により適法性の確認を行うこと。適法性の確認が出来ない物件については、法の施行日までにサイトから削除すること。
2.平成 30 年3月 15 日以降に届出がなされた物件について、仮の届出番号が確認出来た場合には、住宅宿泊事業法の施行日前においても民泊仲介サイトへ掲載することができる。(さらに、旅行業者にあっては、予約及び決済についても可能。)
3.住宅宿泊仲介業者の登録申請を行おうとする者は、上記1.及び2.により実施した対応措置について、登録申請時までに観光庁へ報告すること。
4.上記3.の報告以降に、新たに民泊仲介サイトに物件を掲載するにあたっては、上記1.及び2.の措置を講じた上で掲載すること。
5. 登録申請の際には、法令遵守に責任を有する部局や責任者を明示した組織図等の添付が必要となるので、登録申請までに必要な体制を整備すること。
Ⅱ.住宅宿泊事業法の施行後において講ずべき措置

6. 住宅宿泊事業法の届出物件を民泊仲介サイトに掲載するにあたっては、住宅宿泊事業者から通知される届出番号を確認すること。当該確認ができない物件については、民泊仲介サイトに掲載しないこと。

7. サイト利用者へ適法な物件であることを周知する等のため、民泊仲介サイトにおいて、届出番号等物件の適法性に関する情報を表示すること。
8. 住宅宿泊契約の締結前の書面の交付において、サイト上で必要事項の確認画面を設けた上で、契約締結後速やかに電子メールを送付する方法も認めること。
9. 宿泊日数が 180 日を超えていないか等を補完的に確認するため、民泊仲介サイトに掲載の届出物件に係る宿泊実績等の情報について6ヶ月毎に観光庁へ報告すること。
10. 上記9.の報告等により、違法な物件が掲載されていることが確認された場合には、観光庁からの求めに応じ、速やかに当該物件を削除等すること。

 

いかがでしょうか。違法物件が堂々と紹介されていたことが異常なのですから、本来正しい形になっただけではありますし、許認可の歴史を見ていると、まあいずれこうなることは予想できましたが、無許可の民泊オーナーにとっては、背筋が凍る思いがしているかもしれません。

特に、物件を購入して間もない民泊オーナーにとっては非常に厳しい内容かと思います。

オーナーさんは、一刻も早く、合法化するか、撤退するかを考えないと、「民泊破産」になりかねません。

「本当にそんなことがあるのか?」と思う方もいるかもしれません。

しかし、現実に韓国では以前に規制強化で「AIRBNBのリスティング物件大量削除事件」が起こっています。

また、AIRBNBも当初は当初はこの「違法民泊物件の仲介等の防止に向けた措置について」という指針に反対するような姿勢をみせていたものの、現在では当該措置に沿った方向で動くようなコメントを出してきています。

ですから、こっそり民泊運営を行っている民泊オーナーさんはとにかく一刻も早く早く合法化か撤退かを考える必要があります。

当事務所のセミナーでは、ずっと「違法民泊をやっている人は、早く合法化しましょうね、そうでないといずれ民泊運営が困難となり、後悔しますよ」ということをずっと言い続けてきましたが、全くその通りになりましたね。

なお、当事務所でも、民泊を合法化するためのお手伝いを行ってきておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

 

民泊ビジネスについてのお問い合わせは・・・

TEL:06-6375-2313(※相談予約制)

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民泊新法の未来―日数制限と管理者について

民泊新法はこうなる!

1.民泊新法の概要が明らかに

今までなかなか方向性が見えてこなかった民泊の規制ですが、平成28年6月2日に規制改革実施計画の閣議決定があり、民泊新法の全貌がほぼ明らかとなり、ようやく民泊新法の着地点が見えてきました。

今後は家主が居住するホームステイ型と家主が不在の投資型によって規制の内容が異なります。

また、家主不在型の管理者や民泊の仲介事業者は登録制となります。

そして、民泊運営には一定の日数制限がつきます

それでは、今回の民泊新法に関する規制改革計画の内容を以下、解説します。

 

 

2.民泊の規制改革計画の概要

1.民泊の類型は(1)家主居住型(2)家主不在型の2つのタイプに分けられています。

(1)家主居住型

(家主居住型の民泊の要件)

 

①個人の生活の本拠である(原則として住民票があ る)住宅であること。

→一次的には住民票で判断されますが、形式上住民票を移した場合でも、生活の本拠が住民票の場所にない場合は、条件をみたさず、家主不在型になります。

 

②提供日に住宅提供者も泊まっていること。

→例えば、家主が海外に長期出張したり、自分が自宅を使わない休日だけ貸し出す場合は、家主居住型にはなりません。あくまでホームステイのように、同じ屋根の下で宿泊者といることが必要となります。

 

③年間提供日数などが「一定の要件」を満たすこ と。

→ここでの「一定の要件」が何かが重要な問題となりますが、主として「年間180日以下(半年未満)の提供日数制限」を設ける方向です。

つまりは、ホテルや旅館と違い、「住宅」なのだから、「住宅利用」と「民泊利用」と比較した場合、住宅としての利用がメインである必要がありますよ、ということです。

 

 

(家主居住型の民泊規制の内容)

①届出制とし、以下の事項を義務化する。

 

・利用者名簿の作成・保存が必要

→利用者の住所、氏名、生年月日、パスポート番号、職業等の記載が必要となると思われます。

 

・衛生管理措置(一般的な衛生水準の維持・確保)が必要

→一定の水質の保持、清掃等が必要になります。

 

・利用者に対する注意事項(騒音、ゴミ処理等を含むの説明、民泊を行っている旨の玄関への表示、苦情等への対応など)が必要

→近隣住民とのトラブルを起こさないよう、家主が宿泊者にしっかりと説明し、苦情があれば真摯に対応する必要があります。

 

・管理規約違反がないことの確認(※集合住宅(区分所有建物)の場合)

→購入したマンションの場合、多くの場合、利用目的は居住用になっていますので、例えば「民泊が可能である旨の文言」まで必要となれば、ほとんどのマンションでは民泊不可となってしまいそうです。今後は、管理規約の中に、「民泊可能」か「民泊不可」かが明記されていく方向になると思われます。

 

・賃貸借契約(又貸しを認めない旨の条項を含む)違反の不存在の確認(※住宅提供者が所有者でなく賃借人の場合)

→いわゆる転貸の場合は、オーナーさんから転貸可能である旨の承諾を取り付ける必要があります。

 

・行政当局(保健衛生、警察、税務)への情報提供

→伝染病等の発生、犯罪の発生、税金が無申告の場合等は関係行政機関への情報提供義務があります。

 

②住宅として、住居専用地域でも民泊実施可能とす る。ただし。地域の実情に応じて条例等により実施できないこととすることも可能とする。

→恐らく、民泊許可や簡易宿所の許可申請をする場合に、今まで長らく民泊ホストを悩ませてきた、建築基準法や消防法については、チェックの対象にはならないのではないかと思われます。ただし、「条例で民泊禁止が可能」ということになると、何かトラブルがあった場合に、国ではなく民泊を認めた自治体に住民から責任追及が来ることを恐れ、「民泊禁止」に動く自治体がかなり多くなるように思います。

 

③宿泊拒否制限規定は設けない

→AIRBNB等で、過去の評価の悪いホストは断ることができます。

 

 

 

(2)家主不在型

(家主不在型の民泊の要件)

①個人の生活の本拠でない、又は個人の生活の本 拠であっても提供日に住宅提供者が泊まっていない住宅であること。(※法人所有のものも含む。)

②年間提供日数などが「一定の要件」を満たすこと。

→「一定の要件」としては、年 間提供日数上限による制限を設けることを基本として、半年未満(180日以下)の範囲内で適切な日数 を設定する、としているので、家主不在型の場合も、家主居住型でも、どちらも半年未満(※具体的に何日かは今後決定される)という日数制限がつくことになります。

 

③提供する住宅において「民泊施設管理者」が存在すること。(登録された管理者に管理委託、又は住宅提供者本人が管理者として登録。)

→家主不在型の場合、誰が責任者なのかわからないことが問題視されてきた経緯から、本人または登録された管理者に委託して、誰が民泊の管理責任者なのかを明確にすることになります。

 

 

(家主不在型の民泊規制の内容)

 

①届出制とし、民泊を行っている旨及び「民泊施設管理者」の国内連絡先の玄関への表示を義務化す る。

→これにより、民泊をやっていることは外部からわかるようになり、また、苦情があれば、それを見た住民から連絡がくることになります。

 

②住宅として、住居専用地域でも民泊実施可能とする。地域の実情に応じて条例等により実施できないこととすることも可能とする。

 

③宿泊拒否制限規定は設けない。

 

 

2.民泊施設管理者について

 

①民泊施設管理者は登録制とし、以下の事項を義務化する。

 

・利用者名簿の作成・保存 ・衛生管理措置(一般的な衛生水準の維持・確保)
・利用者に対する注意 事項(騒音、ゴミ処理等を含む)の説明、苦情等へ の対応など
・管理規約違反 の不存在の確認(※集合住宅(区分所有建物)の場合) 、賃貸借契約(又貸しを認めない旨の条項を含む)違反の 不存在の確認(※住宅提供者が所有者でなく賃借人の場合)
・行政当局(保健衛生、警察、税務)への情報提供義務

→ここまでは、概ね家主居住型の家主の義務を民泊施設管理者が代わって行う、ということになります。

 

 

・法令違反行為を行った場合の業務停止、登録取消を可能とするとともに、不正行為への罰則を設ける。

→ここは管理者にとってとても恐ろしい内容ですね。きちんとやるべきことをやっていないと、業務停止となり、犯罪者となってしまう可能性があります。ですので、逆にこれがプレッシャーとなって、ちゃんと義務を果たす方向に向かう、ということでもあります。

 

 

3.民泊施設の仲介事業者の規制

①登録制とし、以下の事項を義務化する。

・消費者の取引の安全を図る観点による取引条件の説明
・当該物件提供が民泊であることをホームページ上に表示
・行政当局(保健衛生、警察、税務)への情報提供
②届出がない民泊、年間提供の日数上限など「一定の要件」を超えた民泊を取り扱うことは禁止する。

③法令違反行為を行った場合の業務停止、登録取消を可能とするとともに、不正行為への罰則を設ける。

 

→これはAIRBNB等の民泊仲介業者にとっては非常に大きなプレッシャーになります。また現在は多くの違法の疑いのある物件も登録されていますが、そのような物件を登録していると民泊仲介業者はビジネスができなくなります。

 

そうすると、無許可(無届け)の民泊施設は登録されなくなりますので、ヤミでの民泊は相当困難になると思われます。

 

4.民泊新法の内容のまとめ

今回の規制改革実施計画で、住居としての民泊は日数制限がかかり、一年中営業が出来ないということが、ほぼ決まっていますので、日数制限が年間何日までの規制となるのかが興味深いところです。

ただ日数制限が最大の180日を限度とする、という規制内容としても、年間180日の稼動ですと、投資的な魅力はかなり薄れてしまうと思いますので、一泊から宿泊可能な簡易宿所の許可取得を検討したほうがいいケースも多くなると思います。

また国家戦略特区の民泊条例や簡易宿所(ゲストハウス)の許可よりも大幅に民泊可能な条件を緩和する以上、無許可、無届でのヤミ民泊の取り締まりは相当厳しくなります。

これから民泊ビジネスを長期的にやっていきたい場合は、近い将来このようなルールになることを踏まえ、賃貸との組み合わせや簡易宿所の許可や民泊許可を得る等の方法で、合法的な運営方法を模索していく必要があると思います。

 

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