民泊新法上の届出は使えるか?

6月15日の民泊新法の施行後、中国人、台湾人、香港人をはじめとする外国人の方から大阪や京都で民泊を経営したいという相談が多数寄せられています。

ここで、民泊新法で届出だけで民泊事業をできる、ということばかりが話題となっています。

しかし、そもそも住宅宿泊事業法は営業日数制限といって、年間で180日以内の制限があり、また地方自治体レベルでの上乗せ条例が多数可決されています。

自治体によっては、学校の付近での平日民泊禁止や、閑散期の2ヶ月のみ営業可能など、かなり大きな制限がかかるケースも多く、ビジネスそのものとしてかなりハードルが高くなっていることが多いです。

つまり、住宅宿泊事業法に基づく届出は、どちらかといえば自宅や別荘、マンションの空き部屋を有効利用することが主眼で、ビジネスとして行うとしても、がっつりビジネスとして行うのは難しいといえます。

一方で、旅館業法のホテル、旅館、簡易宿所に関する改正もなされています。

今回の改正では、旅館業法の基準が大幅に緩和されていますので、民泊をビジネスとしてばりばりやっていきたい方についてはこちらの方が使えるな、と個人的には思っているので、民泊ビジネスに興味のある方は是非御覧ください。

民泊新法施行後のホテル・旅館の制度的改正点

ホテル・旅館の改正点としては以下のような改正がなされています。

ホテル、旅館の最低客室数の廃止

従来は、ホテル営業:10 室以上、旅館営業:5室以上という基準がありました。つまり、客室が1室しかないホテルというものはありえなかったわけです。

しかし、今回の改正でホテル営業:10 室、旅館営業:5室の基準が撤廃されました。

これにより1室から旅館・ホテル営業の許可取得が可能となります。

つまりこれは、古民家や一軒家でも、「ホテル」になりうる、ということです。

和室・洋室の構造設備の要件の廃止

ホテル営業は、少なくとも過半数は洋室(寝具は洋式であること)である必要がありました。

しかし、今後は和洋の区別がなくなります。つまり、洋式の部屋のみでも、和式の部屋のみでもホテルになります。

したがって、和室のみしかない「和式ホテル」も可能になります。

便所の設備基準の緩和

従来例えば「定員6人~10人は、大便器2個小便器1個」が基本的なラインでした。このため、トイレの増設で多額の工事費用がかかったり、トイレを設置したくてもスペースがなくてできないことが多くありました。

しかし、今後は「定員6人~10人は、大便器2個小便器1個」という基準ではなくなり、適当な数の便所を有すればよいとなりました。

これにより、自治体によってはトイレの数が少なくても設備に問題ないとして認めることも出てきますので、今まで構造上の問題で旅館業の申請ができなかった物件も申請が可能になります。

玄関帳場等の基準の緩和

玄関帳場については、厚生労働省の指針としては、すでに廃止され、「代替措置をとることを条件に」玄関帳場の必要性は各自治体で判断することになっていました。

ただ、今回より指針が明確になりました。

今回の改正により、いわゆるフロントの設置が、玄関帳場等の代替機能のあるもので可能になります。これにより常駐スタッフが不要になるので、人件費の大幅な削減につながります。

具体的には、ビデオカメラでの本人確認、スマートロック、近所の事務所でチェックインなどで対応が可能です。

ただし、あまりにも離れた場所では緊急対応ができないので、『常時10分以内に駆け付けられる体制』が必要です。

つまり、近隣であれば、複数の宿を1カ所の事務所で管理することができます。これをサテライト型玄関帳場といいます。

具体的に必要となる「玄関帳場等に代替する機能を有する設備」の基準は下記の通りです。

① 事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応を可能とする設備であること

② 宿泊者名簿の正確な記載、宿泊者との客室の鍵の適切な受け渡し及び 宿泊者以外の者の出入りの状況の確認その他善良の風俗の保持を可能とする設備であること。

全く本人確認が不要というわけにはいきませんが、従来よりも、ホテルや簡易宿所の運営がしやすくなったことは間違いありません。

まとめ

以上のように、民泊新法の施行後は、住宅事業法に基づき届出をする以外にも、思い切ってホテルの開業をしてみる、というのも一つの選択肢です。

今までは「ホテルオーナー」というと、大金持ちのイメージでしたが、今後はホテルを持っているオーナーさんはかなり増えそうですね。

当事務所では、ホテルや簡易宿所の申請、住宅宿泊事業法の届出の代行サポートを行っておりますので、このような問題でお悩みの方は、是非お気軽にお声がけください。